給水塔と赤い屋根 〜阿佐ヶ谷住宅のおはなし〜<予告編>間もなく公開

「ページを開くと浮かんでくる。
 あの日、見上げた給水塔と緑の中からのぞく赤い屋根。
 50余年のありがとうを込めて。」


(『給水塔と赤い屋根』まえがきより)

 長らくご無沙汰しておりました。アサガヤデンショから久しぶりの新刊(の予告編)のお知らせです。

 まずはこちらをご覧下さい。


「電書」と「伝書鳩」という何のヒネリもなく生まれたこのキャラクターがちょこんと腰掛けている台のようなもの、これは阿佐ヶ谷住宅の給水塔をモチーフにしています。
 阿佐ヶ谷住宅とは、東京都杉並区成田東にある1958年に日本住宅公団により分譲された集合住宅です。
 いわゆる「団地」と比べ、全体が非常に有機的に計画され、完成から50数年たった現在では、様々な植物が生い茂り、東京23区内とは思えないような環境が育まれています。
 阿佐ヶ谷住宅を特徴づけるのは、前川國男建築事務所が設計した赤い三角屋根のテラスハウスはもちろんですが、緩やかにカーブを描く道路、パブリックともプライベートとも言いがたいのんびりとしたコモンスペース、それぞれの建物へ続く小径などからなる大らかで自由な雰囲気です。テラスハウスの専用庭やコモンスペースには、住民たちが思い思いに植えた樹木や植物が四季折々いろんな表情を見せてくれます。その他にも善福寺川阿佐ヶ谷住宅に住む鳥たちが運ぶ種からも多くの植物が育っており、当初10〜15種類だった植物は、100種類以上に増えています。そんな環境の中、野鳥はもちろん、タヌキやネコ、アオダイショウなど人間以外の動物たちも住み着いています。
 阿佐ヶ谷住宅は過去にも様々なところで取り上げられる事も多く、ご存知の方もいらっしゃるかもしれません。その一方で、阿佐ヶ谷に暮らしながらもいまだに知らないという方も少なくないという、ちょっと不思議な存在です。そんな阿佐ヶ谷住宅に、老朽化を理由とした再開発計画が持ち上がったのはもう随分前のことでした。
 年齢職種もバラバラな私たちが、阿佐ヶ谷を拠点とした、阿佐ヶ谷にまつわる電書グループを発足したのが今から2年前。いつか無くなってしまうかもしれない風景を少しでも形に残したいと、阿佐ヶ谷住宅のシンボルである給水塔を先のマークに取り入れました。つまりアサガヤデンショとは阿佐ヶ谷住宅を好きな人の集まりでもあったわけです。
 いつか無くなってしまうかも。
 その「いつか」が「今」訪れようとしています。この春、長く保留状態だった阿佐ヶ谷住宅の再開発が本格始動されることになったのです。その知らせを聞き、阿佐ヶ谷住宅に住んでいたメンバーの呼びかけで、私たちは集まりました。
 たとえほんのわずかな時間でも、あの場所で過ごした人の数だけ幾通りもの想いがあるはずです。けれど、その全てを汲み取ることはとても難しいことです。ならば今、私たちができることをしよう、阿佐ヶ谷住宅と、そこにまつわる人々とその暮らし、動物、植物たちの記録をかき集めて、阿佐ヶ谷住宅に贈る1冊の本を作ろう、というのが我々アサガヤデンショが出した結論でした。
 それが、この『給水塔と赤い屋根〜阿佐ヶ谷住宅のおはなし〜』(無料・EPUB版)です。
 4月下旬発行を目標に現在編集作業中。その前にまずは簡単な<予告編>を公開する予定です。公開日、ダウンロード方法などの詳細はこのブログとtwitterにてお知らせしますので、もうしばらくお待ち下さい。